こんにちは、北原です。

東京オリンピックの開催決定以降、都内の駅構内や公共施設で公衆Wi-Fiの設置が活発です。外国人観光客の大幅な増加により、弊社でもホテル様や旅館様へのWi-Fi導入案件を頂戴しております。ありがとうございます。

Wi-Fiの利用シーンは今や多岐にわたりますが、クライアント数が10に満たない小規模オフィスでは、一般家庭用のWi-Fiアクセスポイントが活用されているケースが珍しくありません。

一方で法人向けを謳った製品は、コンシューマー向け製品比で安定性と速度に明らかな違いがあります。価格だけで判断してしまいがちですが、ビジネスシーンにはやはり「法人向け」を謳った製品をお勧めしたいですし、管理のしやすさという観点でも、その快適さを知って欲しいと願っております。

コンシューマー製品と法人向け製品の主な違い

Wi-Fiを利用する側であるエンドユーザー様にとってはあくまで「ただのWi-Fi」、ではこの環境を作り出すために法人向け製品を選ぶ理由は何でしょうか。

「利用シーンが一般家庭じゃないんだから、法人向け製品を選ぶに決まっているでしょ」

技術者の多くはこう言いますが、理由としては弱いです。具体的に掘り下げてみましょう。

  • 高速かつ並列処理を想定したCPUや大容量のメモリを搭載することで、同時接続時の安定性に長けている。
  • 「集中型」製品の場合、近隣の電波状況に応じて自動的に電波の強弱、チャンネルの調整を行える製品もある。
  • 複数台の一括導入を想定した管理画面、ユーティリティが用意されている。
  • 天井などの高所、壁など電源の用意が難しい場所においても、「PoE」による電源供給に対応している。

などが挙げられます。

Wi-Fiに限りませんが、「管理者目線でのメリットが大きい = 安定した接続環境の構築」に直結します。

価格と安定性のバランスに優れたELECOM社製品

前出の通り、複数台一括導入時の理想は「Wi-Fiコントローラー」と呼ばれる親機とWi-Fiアクセスポイントを子機とした「集中型」製品をお勧めしたいところですが、どうしてもご予算の都合上、アクセスポイント1台1台が管理画面を持つ「独立型」を選定せざるを得ない状況は少なくありません。その場合、最近弊社ではELECOM社製 WAB-I1750-PS もしくは WAB-S1167-PS を選定しています。

法人向けを謳う割にはいずれも安価で、発売当初のファームウェア・バージョンでは正直不安定さもありましたが、バージョンアップを熱心に行っておられる結果か、最近のファームウェアではとても安定して動作する印象です。

特にWAB-S1167-PSに至っては1台あたり\20,000を切る価格故、複数台同時納品の案件ではご好評をいただいておりますが、コントローラーによる運用(集中型)は行えません。性質は異なりますが、Windowsマシンへインストールして設定を一括投入できる「WAB-MAT」が用意されているので、活用されると良いと思います。

WAB-S1167-PS と WAB-S600-PS は同スペック!?

上位で「インテリジェントモデル」として展開されている WAB-I1750-PS 比で、コマンドラインによる設定に未対応、同時接続数などの違いから「Webスマートモデル」として並行販売されている両製品ですが、後発の WAB-S600-PS と WAB-S1167-PS の性能差は実質無いに等しいようです。

WAB-S600-PS は「IEEE802.11ac対応はオーバースペック気味なので、n/a/b/gまでの対応製品を望む声に応えた」とのことながら、価格は変わりません。実際にメーカーの営業さんやテクニカルサポートの方に尋ねたことがあるのですが、内部の基盤も同じだそうです。
当記事の執筆時点で既に配布されているIEEE802.11acに対応したファームウェアを適用してしまえば同じ製品になってしまうのですが、最近私が実際に経験したある事情により、当面は WAB-S1167-PS を選定しておくべきと考えております。

事前共有キーに.(ドット)を含んだ文字列を設定出来ない

Radiusサーバーを用いた認証を取り入れられている場合は別として、認証を事前供給キーで行っている環境かつ、その文字列に.(ドット)を含む場合は機器選定に注意が必要です。

WAB-S1167-PS で実際に設定してみたところ…

WAB-dot

試験的に弊社のインターネット・ドメイン名である「itpower.jp」を設定してみようとした様子です。怒られてしまいました。

機器入荷直後のファームウェアバージョンはVer.1.4.12、初期設定を始めるにあたり真っ先に当記事執筆現在の最新バージョンである Ver.1.4.17 の適用を完了し設定を始めた環境でのことです。

過去、同じ機種では発生していなかったため、削除せずに保存してあったVer.1.4.12へダウングレードしたところ、.(ドット)を含んでいても設定する事が出来、後に Ver.1.4.17 へ再アップデートしましたが、どちらのバージョンでにおいてもWi-Fiの接続品質には何ら影響しませんでした。

最新ファームウェアの不具合と思いメーカー様へ確認したところ、意外にも「.(ドット)を事前供給キーに含める事が出来ないのは”仕様”」との回答でした。「旧バージョン Ver.1.4.12 で入力出来てしまうことが不具合であったため、Ver.1.4.17 で修正した」そうです。

このことから、実際には試していませんが後発であるWAB-S600-PS では、メーカーWebサイトから入手出来ない最初期バージョンと、IEEE802.11ac規格に対応した Ver.1.0.3 のいずれにおいても.(ドット)を用いること事が出来ないと考えられるため、事前共有キーに.(ドット)を含む文字列を設定したい場合は WAB-S1167-PS を選定し、旧バージョンのファームウェアのご用意を!となります。

恐らくファームウェアのプログラムを記述する上での事情と推察しつつも、「.(ドット)を含めて設定出来る仕様」への改善を要望させていただきました。

旧バージョンのファームウェアは入手可能!?

ELECOM社のWebサイトでは最新バージョンのみのリンクがあり、旧バージョンは一見してダウンロード出来ないようになっております。当然の様ですが「ダウングレードはサポート外」であるためだそうです。

しかしながら、当記事の執筆現在、入手することは可能です。メーカーWebサイトのサーバー上には WAB-S1167-PS-FW-V1-4-12-14.zip というファイル名で削除されず残っている、とだけ書かせていただきます。

なお、くれぐれも旧バージョンのダウンロード及びダウングレードは自己責任にてお願い致します。

特異なケースではありますが、ご注意いただければ幸いです。

2016.5.6 追記

メーカー様Webサイト上に明確な差違の表記が追記され、新製品が発表されました。

WAB-S1167-PS:最大867Mbps
WAB-S600:最大300Mbps
WAB-S600:最大300Mbps ※5GHz/2.4GHz排他